梅雨の賃貸トラブルはこれで万全!事例別の具体的な対策を徹底解説

梅雨の時期は、物件における様々なトラブルが多発し、対応に追われることも少なくありません。雨漏り、カビ、湿気…これらの問題は入居者様の生活の質を著しく低下させるだけでなく、管理会社としての信頼を損なう可能性も孕んでいます。そこで今回は、管理会社として知っておくべき、梅雨の時期に頻発するトラブルとその対策を徹底解説します。

はじめに|なぜ梅雨の時期に物件トラブルは急増するのか?

梅雨時期は、連日のように雨が降り続くことに加え、空気中の湿度が著しく高まるのが特徴です。湿度70%以上、温度25度前後といった環境は、建物にとって大きな負担となります。特に木材など、湿気の影響を受けやすい建材は、水分を吸収して歪みや変形を起こす可能性があり、建物の構造にも影響を及ぼしかねません。また、長期間湿った状態が続くことで、外壁のひび割れやコーキングの劣化箇所などから、普段は浸入しないような微細な隙間からも雨水が建物内部にじわじわと染み込みやすくなります。このように、梅雨特有の高温多湿な気候は、建物の劣化を早めたり、潜在的な問題を顕在化させたりする要因となるのです。

この梅雨特有の気候条件が引き金となり、賃貸物件では様々なトラブルが急増します。具体的な梅雨時期のトラブル事例としては、以下が挙げられます。

雨漏り(屋根、外壁、サッシ周りからの浸水など)

カビの発生(浴室、洗面所、押入れ、壁面など広範囲に及び、特に換気不足や結露が原因で発生しやすい)

湿気による建材の劣化や異臭

高温多湿を好むダニやゴキブリといった害虫の大量発生

インターホンや給湯器などの住宅設備の故障

ベランダや共用廊下、エントランスや駐車場といった共用部分での排水不良や転倒リスク

これらのトラブルは、入居者様の快適な生活を妨げるだけでなく、不動産管理会社様にとって深刻な課題となります。トラブル発生に伴う入居者様からのクレーム対応の増加はもちろんのこと、迅速な状況確認や業者手配といった業務負担の増加、そして修繕費用の発生は避けられません。梅雨時期のトラブル対応は、まさに不動産管理業務における正念場と言えるでしょう。

【事例で学ぶ】梅雨に多発する賃貸トラブルと具体的な対応策9選

ここでは、賃貸物件で特に発生頻度が高いと考えられる10の具体的なトラブル事例を取り上げ、その原因と管理会社として取るべき対応策を詳しく解説します。これらの事例と対策を事前に把握しておくことで、梅雨の時期に発生しうる突発的な事態にも、落ち着いて迅速に対応できるようになります。ぜひ、日々の管理業務にお役立てください。

ベランダの排水口詰まりによる階下への水漏れ

梅雨時期の集中豪雨や長雨により、ベランダの排水口が詰まり、階下へ水漏れが発生するトラブルは少なくありません。排水口が詰まる主な原因としては、飛んできた落ち葉や枯れ枝、砂埃、洗濯物の糸くず、鳥のフンなどが挙げられます。これらが蓄積し、排水経路を塞いでしまうことで、ベランダに雨水が溜まり、「プール状態」となってしまいます。

トラブルが発生した場合、管理会社はまず入居者様から被害状況を詳細にヒアリングし、必要に応じて現地へ急行して状況を確認することが重要です。応急処置として、詰まりの原因となっているゴミの除去を指示したり、水がせき止められている箇所があれば排水経路を確保したりといった対応を行います。場合によっては、高圧洗浄などを行う専門業者の手配を迅速に進める必要があります。

管理会社の巡回時に、ベランダの排水口の状態を目視で点検する習慣をつけることで、早期に異変を発見し大きなトラブルに発展するリスクを低減することができます。

外壁のひび割れやサッシの劣化が原因の雨漏り

梅雨時期の雨漏りの原因として多く見られるのが、外壁のクラック(ひび割れ)や窓・ドアサッシ周りのシーリング材の劣化です。築年数が経過した物件では、経年劣化によりクラックやシーリングの硬化・剥離が進んでいるケースが多く、梅雨時期にその影響が出やすくなります。

雨漏りが発生した場合の対応は以下の通りです。

入居者様から雨漏りの発生箇所、量、頻度などを詳しくヒアリングする。

迅速に現地を確認する。

原因箇所を特定するために、外壁やサッシ周りを注意深く点検する。

原因が外壁のクラックであれば、その規模に応じた補修が必要です。幅の大きなクラックには、Vカット・Uカット工法で処理した後に補修材を充填したり、低圧注入工法で内部に樹脂を注入したりするなど、専門的な工法が用いられます。サッシ周りのシーリング材が劣化している場合は、既存のシーリングを撤去してから、新たに打ち替える工事を行います。シーリング打ち替えの費用は、1mあたり900円~1,200円程度が目安です。劣化が激しい場合やサッシ自体に問題がある場合は、サッシ交換が必要になることもあります。

こうしたトラブルを未然に防ぐためには、定期的に建物診断を実施し、外壁やサッシ周りの状態を把握しておくことが大切です。特に梅雨入り前にこうした箇所を点検し、必要に応じて計画的な修繕を進めておくことで、雨漏りのリスクを大幅に低減できます。

コーキングの亀裂からじわじわと雨水が侵入

外壁材同士の継ぎ目や窓枠、換気扇フードといった開口部の周りに使用されるコーキング材は、建物の防水性や気密性を保つ上で非常に重要な役割を担っています。このコーキング材も時間の経過とともに劣化が進みます。紫外線や風雨、建材の伸縮など外部からの負荷によって弾力性を失い、ひび割れや亀裂が生じやすくなるのです。

コーキングにひび割れが発生すると、そのわずかな隙間から雨水が建物内部にじわじわと侵入し始めます。このタイプの雨水侵入は、ベランダからの水漏れのようにすぐに顕在化しにくく、気づかないうちに内部の劣化が進行しているケースが少なくありません。

管理会社としては、入居者様から壁のシミやカビの報告を受けた際には、まず被害箇所の写真撮影やヒアリングを行い、状況を正確に把握することが大切です。場合によっては、専門業者に調査を依頼し、原因箇所を特定した上で、劣化したコーキングの「打ち替え」や「増し打ち」といった補修工事をオーナー様へ提案・手配する必要があります。

ゲリラ豪雨から賃貸物件を守る!効果的な備えと対策

エアコンのドレンホース詰まり・カビによる悪臭クレーム

梅雨時期に急増するクレームの一つに、エアコン関連のトラブルがあります。特に多いのが、エアコン内部で発生した結露水を屋外に排出するドレンホースの詰まりが原因で起こる問題です。ドレンホースの詰まりは、エアコンからの水漏れの主な原因の一つとされており、家庭用エアコンの水漏れトラブルの約70%から80%がドレンパンやドレンホースの汚れや詰まりに起因するとも言われています。このドレンホースには、空気中のホコリやゴミ、エアコン内部で繁殖したカビ、さらには虫などが侵入し、蓄積することで排水経路を塞いでしまいます。

このようなエアコンのトラブルに対し、管理会社としては迅速な対応が求められます。入居者様から水漏れや悪臭の連絡があった際は、まずドレンホースの状態を目視で確認し、ゴミや虫の詰まりが見られる場合は、割り箸や歯ブラシ、または掃除機などで簡易的な清掃を試みるよう指示することも有効です。

浴室・洗面所の換気不足による黒カビの大量発生

浴室や洗面所は、使用に伴い湿度が高くなりやすく、石鹸カスや皮脂汚れなどがカビの栄養源となるため、黒カビが発生しやすい場所です。こうした場所で換気が不十分だと、湿気が室内にこもり、カビにとって最適な繁殖条件が整ってしまいます。窓がない浴室や、設置されている換気扇の性能が十分でない物件では、このリスクがより高まります。

黒カビの発生を防ぐためには、湿気を効果的に排出することが非常に重要です。入居者様へは、入浴後は必ず換気扇を長時間運転すること、可能であれば窓を開けて空気の通り道を作り、換気扇と併用して効率よく換気を行うことを強く推奨しましょう。また、使用後に壁や床に残った水滴を拭き取る、排水口周辺や浴槽周りなど汚れが溜まりやすい箇所をこまめに清掃することも、カビの栄養源を取り除く上で有効な対策です。

管理会社としては、定期的な巡回時に浴室や洗面所の換気設備が正常に動作しているかを確認する、換気扇フィルターの清掃状況を入居者へ呼びかけるといった予防策を実施できます。根本的な解決策として、オーナー様へ高効率な換気扇への交換や、浴室全体への防カビコーティング施工などを提案することも重要です。こうした対策を組み合わせることで、梅雨時の黒カビトラブルを抑制し、入居者の快適な住環境を維持することにつながります。

管理会社が賃貸オーナーから信頼を得るには

押入れやクローゼット内の湿気と結露によるカビ被害

押入れやクローゼットは、構造上、空気の循環が悪く湿気がこもりやすい場所です。特に外壁に面した箇所は、室温との差で結露が発生しやすく、カビの温床となりやすい環境と言えます。換気不足や、荷物を詰め込みすぎている状態、湿気を含んだ布団などを収納していることも原因となります。

カビが発生すると、内部の壁紙や収納している衣類、布団などにカビが生え、不快なカビ臭が発生します。カビの胞子は非常に小さいため、カビ臭を感じた時点で、目に見えなくてもカビが発生している可能性が高いと考えられます。これは入居者の大切な家財に損害を与えるだけでなく、健康面にも影響を及ぼす可能性があります。

管理会社として、入居者への具体的な予防策の周知が重要です。以下の点を提案しましょう。

定期的に扉を開けて換気する

すのこを敷いて通気性を確保する

市販の除湿剤を設置する

衣類や布団などを詰め込みすぎず、壁との間に隙間を設けて収納する

万が一カビが発生してしまった場合は、軽度であれば市販のカビ取り剤で清掃できることを伝えつつも、広範囲に及ぶ場合やご自身での対応が難しい場合は、専門業者への相談が必要となることを案内しましょう。状況によっては管理会社が立ち合い、被害範囲の確認や対応の検討を行うことも必要です。

湿気が原因のインターホンや給湯器など住宅設備の故障

梅雨時期の多湿な環境は、インターホンや給湯器といった住宅設備にも影響を及ぼすことがあります。これらの機器の内部にある電子基板や接続部分に湿気が入り込むと、ショートや接触不良を引き起こし、故障の原因となることがあります。

湿気による故障が発生した場合、インターホンでは「呼び出し音が鳴らない」「来訪者の声が聞こえない」「モニターが映らない」といった症状が見られます。給湯器では「リモコンにエラーコードが表示される」「お湯が出ない、温度が安定しない」といった不具合が発生することがあります。

こうしたトラブルの連絡を受けた際は、まず入居者様から具体的な症状を詳しくヒアリングします。次に、機器の電源状態や設置場所の環境を確認します。症状が続くようであれば、自己判断せずにメーカーや専門の修理業者へ問い合わせを行い、点検や修理、または交換の手配を迅速に進めることが重要です。

予防策としては、機器の設置場所周辺の換気を日常的に行うよう入居者様に協力を求めることが有効です。また、屋外に設置されたインターホンの子機などには、必要に応じて簡易的な防水カバーの設置を検討することも、湿気や雨水の浸入リスクを減らす対策となり得ます。定期的な点検時に機器の状態を確認することも、早期発見に繋がります。

共用廊下や階段が雨で滑りやすくなる転倒リスク

梅雨時期は、共用廊下や階段といった共用部分での転倒事故のリスクが高まります。過去には、雨で濡れた共用階段で転倒し、怪我をした事例も報告されています。このような転倒事故は、入居者様が怪我をされるだけでなく、管理会社やオーナー様の安全配慮義務違反が問われ、損害賠償責任が発生するケースも近年増加しています。事故を未然に防ぐためには、管理会社による積極的な対策が欠かせません。

具体的な対策としては、以下の点が挙げられます。

「滑りやすいのでご注意ください」といった注意喚起の掲示を視認性の高い場所に設置すること

滑り止め効果のあるマットを設置したり、階段の段鼻に滑り止めテープを貼ったりする物理的な対策

雨天時には定期的に巡回を行い、床面に溜まった雨水をモップなどで拭き取ること

日頃から共用部分の床材の状態を把握し、必要に応じて滑り止め塗装などの施工を検討すること

梅雨時期だけでなく、年間を通して滑りやすい箇所がないか点検し、安全確保に努めることが、入居者様の安心につながり、管理者としての責任を果たす上でも重要です。

エントランスや駐車場の排水不良による冠水トラブル

梅雨時期の集中豪雨や想定を超える降雨量が発生すると、マンションやアパートのエントランス、特に地下や半地下構造の駐車場などで、排水能力が追いつかずに冠水トラブルが発生することがあります。

こうした冠水トラブルの主な原因としては、排水溝や側溝に溜まった落ち葉、泥、ゴミなどによる詰まりや、排水設備の老朽化による処理能力の低下、そして近年のゲリラ豪雨のような短時間での極端な降雨量が挙げられます。

万が一冠水が発生した場合は、まず入居者へ注意喚起を行い、危険箇所への立ち入りを制限するなど、二次被害の防止に努めます。冠水状況や原因の可能性のある箇所(排水溝など)を確認し、可能な範囲で排水作業を行います。根本的な解決には、専門業者による排水管の高圧洗浄や、排水ポンプの修理・交換が必要です。再発防止のためには、梅雨入り前に側溝や排水溝の定期的な清掃を実施することや、必要に応じて排水設備の改良をオーナーに提案することなどが重要です。入居者の生活や資産に直接的な影響を与えるトラブルであるため、迅速かつ誠実な対応がクレームを悪化させないポイントとなります。

まとめ:入居者満足度を高め、梅雨の繁忙期を乗り切ろう

梅雨時期は、雨漏りやカビ、設備の故障など、賃貸物件において様々なトラブルが発生しやすい季節であり、完全に避けることは難しい現実があります。しかし、本記事で解説してきたように、事前の周到な準備とトラブル発生時の迅速かつ適切な対応を組み合わせることで、被害を最小限に抑えることは十分に可能です。

これまで見てきた事例別の具体的な対策や、梅雨入り前に管理会社が主体となって取り組むべき先回り対策は、単に建物の状態を良好に保つだけでなく、結果として入居者様の安全と快適な生活環境を守り、その満足度向上に大きく貢献します。入居者様からの信頼を獲得することは、管理会社の評価を高め、長期的な安定経営にも繋がる重要な要素と言えるでしょう。

梅雨の時期は、管理会社の皆様にとって特に業務負担が増える時期ではありますが、ご紹介した対策を実践することで、トラブルを未然に防ぎ、発生時にも冷静に対応できる体制を構築できます。入居者様からの信頼を力に変え、この梅雨時期を乗り越えましょう。この記事が、皆様の管理業務の一助となれば幸いです。

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