リスクとは?基本的な考え方から具体的な管理方法までを解説

「リスクとは何か?」という基本的な疑問から、具体的な考え方をわかりやすく解説します。リスクと聞くと、漠然とした不安を覚える肩もいらっしゃるかもしれません。しかし、リスクを正しく理解し、適切に管理することで、ビジネスや投資など、様々な場面でより良い結果に繋げることが可能です。
目次
まず押さえたい「リスク」の基礎知識
「リスク」という言葉は、日常生活では「危険」や「避けたい悪い出来事」といった、ネガティブな文脈で使われることが多いかもしれません。しかし、ビジネスやプロジェクトマネジメントの世界では、これとは少し異なる専門的な意味合いで使われます。そこでは、リスクとは単にマイナスの事象だけを指すのではなく、「発生する可能性があり、目標達成にプラスにもマイナスにも影響を与える不確実な事象」として捉えられます。企業やビジネスにおいては、「目的達成を不確実にするような要素」と定義されることもあります。
そもそもリスクとは何か?言葉の定義と意味を理解する
前段でも触れたように、日常会話では「危険」といったネガティブな意味で捉えられがちな「リスク」という言葉。しかし、ビジネスや専門分野ではこの言葉の定義が異なります。リスクマネジメントに関する国際規格であるISO 31000(JIS Q 31000)では、リスクを「目的に対する不確かさの影響」と定義しています。この定義における「不確かさ」とは、結果や起こりやすさについての情報の不足や不完全さを指します。そして「影響」とは、目的に対して本来の方向から逸脱することであり、多くの場合マイナスとして捉えられますが、プラスの機会(チャンス)となる可能性も含まれます。
つまり、専門分野で扱われるリスクは、単に損失が発生する可能性だけでなく、将来の不確実な出来事がもたらしうる全ての側面、すなわちプラス面とマイナス面の両方の影響を含む、より広義の概念として理解されているのです。本記事では、このような専門的な定義に基づき、ビジネスやプロジェクトにおけるリスクについて扱っていきます。この広い意味でのリスクの捉え方を理解することが、効果的なリスクマネジメントを進める上での第一歩となるでしょう。
なぜビジネスや個人にとってリスク管理が重要なのか?
リスク管理は、ビジネスの持続的な成長や個人の安定した生活にとって不可欠です。企業にとってリスク管理は、予期せぬ損失の回避・軽減や、事業継続性の確保のために重要です。現代のビジネス環境は変動が激しく、技術革新や市場の変化、自然災害など多様なリスクが存在します。これらを適切に管理することは、経営資源を守り、社会的信用を維持し、競争優位性を確立することにつながります。
一方、個人においてもリスク管理は重要です。病気や事故、失業、自然災害など、個人の生活を脅かすリスクは常に存在します。リスク管理を行うことは、自身の財産や生命を守り、生活の安定を図る上で欠かせません。計画的にリスクに備えることで、将来に対する漠然とした不安を減らし、精神的な安心感を得ることにもつながります。
知っておくべきリスクの主な種類:純粋リスクと投機的リスク
リスクは、その性質によって主に二つの種類に大別されます。一つは発生すると損失のみをもたらす可能性のある「純粋リスク」、もう一つは損失だけでなく利益をもたらす可能性も併せ持つ「投機的リスク」です。
純粋リスクは「マイナスリスク」とも呼ばれ、偶発的な事故や人為的なミスなどによって発生するものです。具体的には、地震、洪水、台風といった自然災害による被害、火災による財産の損壊、盗難による資産の喪失、情報漏洩、労働災害などが挙げられます。これらのリスクは、発生を完全に防ぐことが難しく、発生した場合には一方的に損失が発生するという特徴があります。
一方、投機的リスクは「ビジネスリスク」とも呼ばれ、経済や市場の変動、新規事業など、不確実性が高い状況で発生します。新規事業への投資、新商品開発、為替や金利の変動、金融商品への投資などが代表的な例です。これらのリスクは、成功すれば大きな利益につながる可能性がありますが、失敗すれば損失を被る可能性もあります。
リスクを「見える化」する!具体的な考え方と評価のステップ
ビジネスや日々の生活に潜むリスクは、放置すると予期せぬ問題を引き起こす可能性があります。これらの漠然とした不安や潜在的なリスクを具体的な形で把握し、客観的に認識できるようにすることを「リスクの見える化」と呼びます。リスクを見える化することは、問題点や無駄、業務の属人化といった要素を明確にし、適切な対策を講じるための第一歩となります。
リスクが「見える」ようになれば、関係者間で共通の認識を持つことができ、効果的な対応策を検討・実行する土台が築かれます。このリスクの見える化と評価は、主に以下の3つのステップを経て体系的に進められます。
- リスクの特定
- リスクの分析
- リスクの評価
これらのステップを踏むことで、感覚的なリスク認識から脱却し、データや論理に基づいた客観的なリスク判断が可能になるのです。
ステップ1:あなたの周りに潜むリスクを洗い出す(リスクの特定)
リスクマネジメントで最初に着手すべきは、あなたの周りに潜むリスクを網羅的に特定することです。これは、目標達成を阻害する可能性のあるあらゆる不確実な事象を、漏れなくリストアップする重要なステップです。個人であれば健康問題や自然災害、組織であれば情報漏洩や予期せぬ競合の出現などがリスクの例として挙げられます。
リスクを洗い出す際には、多角的な視点を持つことが欠かせません。「ヒト(人的資源)、モノ(設備・資産)、カネ(財務)、情報」といった経営資源の観点や、事業や業務のプロセスごと、あるいは「外部環境(市場、規制、災害など)と内部環境(組織文化、体制など)」といったフレームワークを用いると、より網羅的な検討が可能です。
ステップ2:リスクが起こる可能性と影響の大きさを分析する
特定されたリスクに対し、次は、そのリスクが実際に発生する可能性と、発生した場合に組織や個人に与える影響の大きさを分析します。まず発生可能性は、過去のデータや経験、類似事例などを基に、どの程度の頻度でリスクが顕在化するかを評価します。評価尺度は「ほとんど発生しない」「数年に一度」「年に数回」といった具体的な頻度や、「低」「中」「高」といった段階で表現することが一般的です。自社の状況や業界特性に合わせて基準を設定します。
次に、リスクが顕在化した場合に組織や個人に与える影響の大きさを見積もります。これは重篤度とも呼ばれ、単に金銭的な損害だけでなく、人命への影響、事業停止期間、企業イメージの低下なども考慮して評価します。評価尺度は「軽微」「中程度」「甚大」「壊滅的」のように、影響の範囲や深刻度に応じて設定します。
ステップ3:対応すべきリスクの優先順位を決める(リスク評価)
特定・分析したすべてのリスクに一度に対応することは、現実的ではありません。時間や予算、人員などの経営資源には限りがあるためです。そこで、リスクマネジメントにおいては、どのリスクから優先的に対応すべきかを決定する「リスク評価」が非常に重要になります。この目的は、限られた資源を最も効果的に配分し、影響の大きなリスクへの対策を確実に行うことにあります。
リスク評価でよく用いられるのが「リスクマトリクス」です。これは、前ステップで分析したリスクの「発生可能性」と「影響度(重篤度)」を二つの軸として、リスクを視覚的に整理する手法です。例えば、縦軸に発生可能性(低・中・高)、横軸に影響度(軽微・中程度・甚大)を設け、個々のリスクを該当するマスにプロットします。これにより、発生しやすく影響も大きいリスクは右上、発生しにくく影響も小さいリスクは左下といった形で、リスクの相対的な位置づけを把握できます。
実践!リスクマネジメントの進め方と基本プロセス
リスクを特定し、分析・評価することで、対応すべきリスクの優先順位が明確になりました。続く本章では、これらの評価結果を踏まえ、実際に組織や企業でリスクマネジメントを導入し、それを効果的に運用していくための具体的な進め方と、その体系的な流れについて解説します。リスクマネジメントは、一度実施して終わりではなく、環境の変化に応じて常に見直しを行い、継続的に実施・改善を重ねていく、終わりなきプロセスです。これから順を追って説明する以下の4つの主要なプロセスは相互に関連し、循環的に繰り返されることで、組織の安定性を高め、持続的な成長を実現するために不可欠です。
- プロセス1:リスクマネジメントの全体像と計画を立てる
- プロセス2:リスクの特定、分析、評価を体系的に行う
- プロセス3:リスクへの対応策を具体的に計画し実行する
- プロセス4:効果を測定し、継続的に改善する(モニタリングとレビュー)
プロセス1:リスクマネジメントの全体像と計画を立てる
リスクマネジメントを効果的に進めるには、まず全体の方向性を明確にする計画段階が不可欠です。この最初のステップでは、なぜリスクマネジメントを行うのか、その目的を明確に定義することから始めます。組織の目的や経営戦略と整合性を図りながら、リスクマネジメントを通じて何を目指すのか、その「目指すべき姿」を具体的にイメージすることが重要です。
次に、リスクマネジメントを適用する対象範囲を定めます。全社レベルで取り組むのか、特定のプロジェクトや部門に限定するのか、あるいはグループ会社を含めるのかなど、実情に合わせて範囲を明確に定義します。この段階で、どの程度のリスクを「重要なリスク」として扱うかの基準も設定しておくと良いでしょう。
プロセス2:リスクの特定、分析、評価を体系的に行う
リスクマネジメントにおける具体的な活動は、まずリスクの特定、分析、そして評価という3つのステップから始まります。これらの各ステップは独立しているのではなく、相互に密接に連携し、全体として一貫したプロセスとして機能することが極めて重要です。
特定されたリスク情報は、「リスク登録簿」と呼ばれる一覧表に集約・整理されます。この登録簿には、リスクの内容や原因、発生した場合の影響、発生可能性などが記録されます。これは、その後の分析や評価の段階で、リスクを客観的に検討するための基礎資料となります。
プロセス3:リスクへの対応策を具体的に計画し実行する
リスクの特定・分析・評価を経て、対応すべき優先度の高いリスクが明らかになったら、いよいよ具体的な対応策を立案する段階に進みます。このステップでは、単にリスクを認識するだけでなく、そのリスクに対してどのように対処するかを具体的に定義します。リスクへの対応策としては、リスクそのものを回避する、リスクの発生確率や影響度を低減させる、リスクを第三者に移転する、あるいはリスクを許容するなど、複数の選択肢が考えられます(これらの戦略の詳細は後述します)。
プロセス4:効果を測定し、継続的に改善する(モニタリングとレビュー)
リスク対応策を実行したことは、リスクマネジメントプロセスの終わりを意味しません。むしろ、そこからが効果検証と継続的な管理の始まりです。対応策が意図した効果を上げているか、計画通りに進捗しているかを継続的に監視すること、これがモニタリングです。効果測定にあたっては、具体的な成果を測るためにKPI(主要業績評価指標)を設定します。例えば、リスクの発生頻度や、顕在化した場合の影響度などが減少したかを数値で追跡します。モニタリングを通じて得られた現状の評価に加え、変化するビジネス環境や新たなリスクの兆候などを踏まえ、リスクマネジメント計画全体を定期的に見直すのがレビューです。このモニタリングとレビューを繰り返すことで、リスク管理活動は常に最新の状態に維持され、PDCAサイクルが効果的に回ります。
リスクにどう対処する?4つの代表的な対応戦略
リスクの特定、分析、評価を経て、対応すべきリスクの優先順位が明確になったら、次はそのリスクに対して具体的な対応策を実行する段階へと進みます。リスクへの対応方法は一つではなく、リスクの種類やその大きさ、組織の状況に応じて最適なアプローチを選択することが重要です。本セクションでは、リスク対応における代表的な4つの戦略をご紹介します。
戦略1:リスク回避-問題の発生源から距離を置く
リスク回避とは、リスクが発生する原因となる活動や状況そのものを排除したり避けたりすることで、リスクに全く関わらないようにする、最も直接的な戦略です。これは、まさにリスクの発生源から距離を置くという考え方に基づいています。
具体的には、危険が予測される作業の中止、リスクの高い新規市場への参入見送り、プロジェクト範囲内の高リスク要素の除去などがこれにあたります。情報セキュリティの分野では、危険なソフトウェアやサービスの利用停止、不要な外部ネットワークへの接続回避、サポートが終了した古いシステムの運用中止などもリスク回避の対応となります。
リスク回避は、特にリスクの発生確率が極めて高く、かつ発生した場合の影響が甚大であると評価される場合に有効な手段です。
この戦略には、以下のような利点と欠点があります。
利点
- リスクが発生する可能性を完全に排除できる
- 予期せぬ損失を完全に回避し、安全性を確保できる
欠点
- 潜在的な利益や機会を失う可能性がある
- 状況によっては業務効率が低下する可能性がある
したがって、リスク回避を選択する際には、得られる機会と失う機会を慎重に比較検討することが重要です。
戦略2:リスク低減-影響を最小限に抑える工夫
リスク低減は、特定されたリスクが実際に発生する確率を下げること、または発生した場合に生じる影響を最小限に抑えるための対策を講じる戦略です。リスクを完全に回避することが難しい場合や、回避することで大きな機会損失が生じる場合に有効な手段となります。
具体的なリスク低減策には、リスクの発生を防止するための対策と、発生時の影響を軽減するための対策があります。例えば、情報セキュリティ対策としてセキュリティソフトを導入することは、ウイルス感染のリスク発生確率を下げる防止の例です。また、物理的なセキュリティとして入出管理を強化したり、ドアの鍵を増やしたりすることは、不正侵入のリスク発生確率を下げる効果が期待できます。さらに、予期せぬトラブルに備えて代替手段を確保したり、災害に備えた防災訓練を実施したりすることは、発生した場合の影響を軽減する対策と言えます。プロジェクトにおいては、チームメンバーの離職リスクに対する引き継ぎ体制の強化、製品の不具合リスクに対する品質管理の徹底、スコープクリープ(要件の増加)リスクに対する変更管理プロセスの明確化などが考えられます。
リスク移転の方法 | 概要 | 主な対象リスク(例) |
---|---|---|
保険 | 保険会社に損失負担を肩代わりしてもらう | 自然災害、火災、賠償責任など |
外部委託 | 特定業務を外部に任せ、関連リスクを移転 | サイバー攻撃、システム障害、情報漏洩など |
戦略3:リスク移転-保険や外部委託で備える
リスク移転とは、リスクがもたらす可能性のある損失や責任を、自社や個人で負うのではなく、第三者に引き渡す、または共有する戦略です。自身だけでは対応が難しい、あるいは負担が大きすぎるリスクに対して有効な手段となります。
リスク移転の代表的な方法としては、保険への加入が挙げられます。これは、保険会社に一定の対価(保険料)を支払うことで、特定の偶発的な出来事が発生した場合に生じる損失を保険会社に負担してもらう仕組みです。特に、発生する確率は低いものの、一度発生すると甚大な損失をもたらす「低確率・高負担」なリスクに対して有効です。具体的には、地震や洪水といった自然災害による物的損害、火災、盗難、交通事故による賠償責任などに備える様々な保険商品があります。
戦略4:リスク受容-許容範囲内のリスクとして受け入れる
リスク受容は、リスクを認識しつつも、あえて特別な対策を講じずに、そのリスクを受け入れると判断する戦略です。これは、リスクから完全に回避したり、その発生確率や影響を低減したりするのではなく、「このリスクは発生しても許容できる範囲だ」と判断した場合に選択されます。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の関連規格であるISO 27000では、「ある特定のリスクをとるという情報に基づいた意思決定」と定義されています。
【事例紹介】身近なビジネスシーンでのリスク対策例
ここまで、リスクの基本的な考え方や、それを特定・分析・評価して対応を計画するリスクマネジメントのプロセスについて解説してきました。ここからは、これらの理論が実際のビジネスシーンでどのように活用され、具体的なリスク対策に繋がっているのかを、身近な事例を通してご紹介します。
事例で学ぶ:中小企業における情報セキュリティリスク対策
中小企業は、大企業と比べてセキュリティ対策にかけられる資源が限られることが多く、さまざまな情報セキュリティリスクに直面しやすい状況にあります。情報処理推進機構(IPA)が公表した「情報セキュリティ10大脅威 2025」(組織編)では、「ランサムウェア攻撃による被害」(1位)、「機密情報等を狙った標的型攻撃」(5位)、「不注意による情報漏洩等」(10位)などが挙げられており、これらは中小企業にとっても特に注意すべき脅威です。例えば、従業員が不注意で機密情報をメールで誤送信してしまうケースや、業務に関係するメールを装った標的型攻撃によりマルウェアに感染し、情報が窃取されるといった事例が見られます。また、ランサムウェアに感染し、業務システムやファイルが暗号化され、事業継続が困難になる事態も発生しています。
これらのリスクに対処するため、まず従業員一人ひとりの情報セキュリティ意識を高めるための定期的な教育が不可欠です。具体的な対策として、以下の点が挙げられます。
- 不審なメールやファイルを開封しないなど、基本的な行動を徹底する。
- 重要なデータは定期的にバックアップを取得し、オフラインで保管する。
- OSやソフトウェアを常に最新の状態に保ち、セキュリティソフトを適切に運用する。
- 不要なアカウントを削除し、アクセス権限を見直す。
こうした対策を講じることにより、情報漏洩による信用の失墜や、サイバー攻撃による事業停止といった深刻な被害を未然に防ぐか、あるいはその影響を最小限に抑えることが期待できます。中小企業が対策を進めるにあたっては、限られた予算や人員の中で費用対効果を考慮し、まずは基本的な対策から優先的に実施することが現実的です。自社のみでの対応が難しい場合は、外部のセキュリティ専門家の支援や、クラウド型セキュリティサービスなどの活用も有効な選択肢となります。
事例で学ぶ:予期せぬ事態に備える事業継続計画(BCP)の重要性
BCP(事業継続計画)とは、企業が地震や水害などの自然災害、感染症のパンデミック、大規模なシステム障害といった予期せぬ緊急事態に直面した場合でも、事業資産の損害を最小限に抑え、中核となる事業を継続あるいは早期に復旧させるために、平常時から準備しておく計画のことです。その主な目的は、緊急時における企業の活動を維持し、事業の中断を可能な限り短くすることにあります。
例えば、大規模地震発生時に、事前にBCPで代替オフィスでの業務継続体制を定めていた企業は、オフィスが被災しても従業員の安全を確保しつつ、重要業務を速やかに再開できました。これにより、顧客へのサービス提供を滞らせることなく、信用の失墜を防ぐことが可能です。
事例で学ぶ:従業員の離職リスクとその対策
従業員の離職は、多くの企業にとって避けては通れない重要なリスクの一つです。従業員が離職すると、単に人手が減るだけでなく、企業活動にさまざまな悪影響を及ぼします。まず、新たな人材を確保するための採用活動にコストがかかります。求人広告掲載費、エージェントへの報酬、面接対応などの人事部門のリソースといった採用コストは、決して小さくありません。さらに、離職した従業員が担当していた業務を既存の従業員が引き継ぐことになり、一人あたりの業務負担が増加し、残業時間が増えるといった問題が生じやすくなります。これにより、既存社員のモチベーション低下や新たな離職リスクにもつながりかねません。優秀な人材の流出は、企業のノウハウ喪失や生産性低下を招き、組織全体の弱体化にも影響します。また、離職率が高いという事実は、社内外に悪評が広まり、企業の採用活動やイメージにも悪影響を及ぼす可能性があります。