会社の未来を考える 経営者が知っておくべき出口戦略

会社の出口戦略は、会社の未来を考える上で、経営者にとって避けては通れない重要なテーマです。事業の継続が難しい状況や、新たな目標に向けての出口戦略を模索する時、どのような選択肢があるのでしょうか。出口戦略を誤ると、会社だけでなく、従業員や取引先にっも大きな影響を与えかねません。本記事では、出口戦略んこ全貌を解説し、経営者の皆様が将来を見据え、納得のいく決断をするための一助となる情報を提供します。

なぜ今、出口戦略を検討する必要があるのか?

近年、市場環境は大きく変化し、事業の先行きに対する不確実性が高まっています。予測困難な時代において、会社の将来について立ち止まって考えることは、経営者にとって避けて通れない重要なテーマです。特に多くの経営者が直面するご自身の高齢化や、事業を引き継ぐ後継者が見つからないといった課題は、早期の検討を要します。

経営者が抱える悩み、事業の先行き、後継者問題

事業を営む経営者の皆様は、日々の経営活動の中で様々な悩みに直面しています。特に、変化の激しい市場環境においては、自社の事業が今後も継続的に成長していけるのかといった、将来に対する漠然とした不安を抱えることも少なくありません。

また、後継者問題は多くの経営者にとって喫緊の課題です。中小企業庁の調査によると、2023年時点の後継者不在率は54.5%に上り、半数近くの企業で後継者が見つかっていません。仮に後継者候補がいたとしても、その育成には時間と労力がかかり、経営能力の承継に不安を感じるケースも少なくないのが実情です。さらに、経営者自身の高齢化が進むにつれて、健康問題への懸念や引退後の生活設計といった個人的な悩みも、将来を考える上で重要な要素となります。

これらの、事業や個人的な将来に対する悩みは、経営者が会社の「出口」について真剣に検討を始める大きな動機となるのです。

出口戦略を早期に考えることの利点

会社の出口戦略について早い段階から検討することは、多くの利点をもたらします。まず、企業価値を最大限に高めるための時間を十分に確保できる点が挙げられます。事業内容のブラッシュアップや財務状況の改善など、計画的な準備を進めることで、より有利な条件でのM&Aや事業承継、あるいはIPOといった選択肢が現実的になります。また、市場や潜在的な買い手の動向をじっくりと見極め、最適なタイミングで実行に移すことが可能になります。

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会社の出口戦略とは?主要な選択肢とそれぞれの特徴

会社の出口戦略とは、将来を見据え、事業の最終的な形を定めるための計画です。これには、会社のさらなる成長を目指す場合や、経営者の引退、後継者不在といった様々な背景があります。多様な選択肢を知り、それぞれの特徴を理解することは、自社の状況に最適な道筋を描く上で不可欠です。

主な出口戦略としては、以下のような選択肢が挙げられます。

  • M&A(株式譲渡・事業譲渡):第三者へ会社や事業を売却する方法です。
  • IPO(株式上場):株式を公開し、市場から広く資金を調達する方法です。
  • 事業承継:親族や従業員、あるいは第三者へ事業を引き継ぐ方法です。
  • MBO(経営陣による買収):現在の経営陣が会社の所有権を取得し、経営を続ける方法です。
  • 廃業・清算:事業活動を終了させ、会社の法人格を消滅させる方法です。

これらの主要な出口戦略は、目的や適した企業の状況が異なります。概要、メリット・デメリット、適したケースをまとめた比較表は以下の通りです。

戦略名概要(目的・対象)メリットデメリット適したケース
M&A第三者への売却による資金獲得、事業継続まとまった資金獲得、事業の存続、他社とのシナジー効果経営権の喪失、企業文化の統合問題、従業員への影響後継者不在、早期の資金化希望、事業のさらなる発展
IPO株式公開による大規模な資金調達、信用力向上多額の資金調達、信用力・知名度向上、優秀な人材確保厳しい上場基準、多大なコスト・時間、経営の自由度制約高い成長性が見込める、大規模な資金が必要、管理体制整備
事業承継親族・従業員・第三者への事業引き継ぎ。理念・雇用の維持。理念・ノウハウの継承、従業員の安心感、円滑な移行後継者育成の困難さ、資金調達課題、相続問題親族・従業員に後継者候補がいる、地域社会への貢献意識
MBO経営陣による会社買収。経営の独立性維持。経営の自由度維持、意思決定の迅速化、情報漏洩リスク低減多額の買収資金、経営陣への負担、既存株主との調整優秀な経営陣がいる、経営の独立性を重視したい、非公開化
廃業・清算事業活動の終了と会社資産の整理。負債の整理、経営からの解放、シンプルに終えられる資産処分損の発生、従業員の失業、対外信用の低下事業継続が困難、売却・承継先が見つからない、経営者の引退

M&A(株式譲渡・事業譲渡)

会社の出口戦略として最も一般的な選択肢の一つが、M&A(Mergers and Acquisitions)、すなわち第三者への会社や事業の売却・統合です。M&Aにはいくつかの手法がありますが、中小企業でよく用いられるのは主に「株式譲渡」と「事業譲渡」です。株式譲渡は、会社の株主が保有する株式を買い手に譲渡し、会社の経営権を移転させる方法で、会社全体を譲渡するイメージです。一方、事業譲渡は、売り手企業が行っている事業の一部または全部、それに関連する資産や権利義務を選別して買い手に譲渡する方法です。

以下に、株式譲渡と事業譲渡の主な違いをまとめます。

M&Aのメリットとしては、まず経営者がまとまった資金(創業者利益)を得られる点が挙げられます。また、買い手企業のリソースを活用することで、事業の継続や更なる成長が期待できます。後継者が見つからない場合の課題解決や、従業員の雇用維持に繋がる可能性もあります。事業譲渡の場合は、不要な事業だけを切り離し、その対価を主力事業に投入することも可能です。

一方で、M&Aには注意点もあります。希望する条件での売却が難しい場合や、そもそも買い手が見つからないリスクも存在します。交渉の過程で情報漏洩のリスクがあり、従業員の処遇が変化する可能性も考慮が必要です。また、譲渡後も一定期間、経営への関与を求められるケースもあります。会社全体を譲渡したい場合は株式譲渡が、特定の事業のみを譲渡したい、あるいは不要な事業を切り離したい場合は事業譲渡が適していると言えるでしょう。

IPO(株式上場)

IPO(Initial Public Offering)、すなわち株式上場も、会社の出口戦略の一つとして考えられる選択肢です。これは、自社株式を証券取引所に上場させ、不特定多数の投資家が自由に売買できるようにすることで、市場から広く資金を調達する方法です。

IPOの最大のメリットは、その圧倒的な資金調達力にあります。株式の発行を通じて大規模な資金を調達できるため、新規事業への投資や設備増強、M&Aなど、大胆な成長戦略を実現するための豊富な資金を確保できます。また、上場企業となることで企業の知名度や社会的信用度が飛躍的に向上します。これにより、優秀な人材採用が有利になったり、金融機関や取引先との関係が強化されたりといったメリットも得られます。

一方で、IPOには無視できないデメリットも存在します。まず、上場準備から維持には、多大なコストと手間がかかります。監査法人による厳しい会計監査や内部統制体制の整備、証券会社やコンサルティング会社への費用など、経済的な負担は小さくありません。加えて、上場後は株主からの経営へのプレッシャーが高まり、短期的な業績向上が強く求められる傾向があります。常に詳細な情報開示義務が課せられ、敵対的買収のリスクにもさらされます。

事業承継(親族・従業員・第三者)

会社の「出口戦略」として、大切な事業と築き上げてきた理念を次世代へ引き継ぐ方法が事業承継です。事業承継には、主に親族へ引き継ぐ「親族内承継」、従業員に引き継ぐ「従業員承継(EBO)」、そして第三者へ引き継ぐ「第三者承継(M&Aの一形態)」という3つの方法があります。

それぞれの方法には特徴があります。親族内承継は最も一般的で、会社の理念や文化を引き継ぎやすい一方、後継者不在や相続・贈与税の問題が生じる可能性があります。従業員承継(EBO)は、事業をよく理解している人材が経営を担うためスムーズな移行が期待できますが、資金調達や他の従業員の理解を得ることが課題となる場合があります。第三者承継は、広く候補者を探せる点がメリットですが、企業文化の維持や従業員の雇用維持に配慮が必要です。

MBO(経営陣による買収)

会社の出口戦略として、現在の経営陣が自社の株式や事業を買い取り、経営権を取得するMBO(マネジメント・バイアウト)という選択肢があります。これは、親族や外部の第三者に事業を承継するのではなく、経営を熟知した現経営陣が主体となって会社を所有し、今後も経営を担っていく方法です。

MBOの主なメリットは、経営の独立性を維持できる点にあります。外部からの影響を受けにくいため、迅速な意思決定が可能となります。また、慣れ親しんだ経営陣が引き続き指揮を執ることで、従業員のモチベーションを維持しやすく、企業の文化や理念を継承しやすいという利点もあります。非公開化を選択すれば、短期的な業績にとらわれず、長期的な視点での経営戦略を実行しやすくなるでしょう。

廃業・清算:事業を閉じる際の法的手続きと留意すべきポイント

会社の出口戦略として、M&Aや事業承継といった方法での継続が困難と判断した場合、最終的な選択肢となるのが廃業・清算です。これは、事業活動を停止し、会社の法人格を法的に消滅させる手続きを指します。

廃業・清算(解散・清算)を選択した場合、法的に定められたいくつかのステップを踏む必要があります。主な流れは以下のステップで進めます。

  • 株主総会での解散決議と清算人の選任
  • 法務局への解散登記申請
  • 官報公告などによる債権者への通知(債権者保護手続き)
  • 会社の財産の現金化(換価)と債務の弁済
  • 残余財産の株主への分配
  • 清算事務完了後の法務局への清算結了登記申請

これらの手続きを経て、会社の法人格が消滅します。

この手続きを進める上で、いくつかの留意点があります。従業員に対しては、解雇手続きや退職金の支払いが必要です。また、清算事務のために一部の従業員に継続して業務を依頼する必要が生じる場合もあります。取引先への通知や、事業に関連する許認可の返納も忘れずに行わなければなりません。

不動産会社が成長するための戦略の立て方

自社に最適な出口戦略を見出すための視点と準備の進め方

これまでの章では、会社の出口戦略の主要な選択肢とその特徴について詳しく解説してきました。ここからは、これまでの知識を踏まえ、いよいよ自社にとって最も望ましい道筋を見つけ出すための検討プロセスに入ります。最適な出口戦略を選択し、その実現を成功させるためには、多角的な視点からの検討と、計画的かつ周到な準備が不可欠です。

自社の現状を客観的に評価し、経営者自身の将来のビジョンを明確にした上で、それぞれの出口戦略のリスクとリターンを慎重に比較検討する必要があります。この過程で特に重要となるのが、「企業価値」の正確な把握です。

まずは自社の現状把握:業績、成長段階、後継者の有無を客観的に評価する

自社に最適な出口戦略を見出すためには、まず現状を正確かつ客観的に把握することが不可欠です。具体的には、以下の点を評価します。

  • 業績:収益性、安全性、成長性などの定量的な財務分析
  • 成長段階:企業のライフサイクルの特定
  • 後継者の有無:社内外の後継者候補の評価

定量的な財務分析を通じて、企業の収益性、安全性、成長性などを評価します。売上高や利益率、キャッシュフローといった主要な指標を分析することは、企業の健康状態を知り、M&Aや事業承継における企業価値を適正に評価する上で非常に重要となります。

また、自社が企業のライフサイクルのどの段階に位置するのか(創業期、成長期、成熟期、衰退期など)を特定することも欠かせません。これにより、将来の成長ポテンシャルや直面している課題が明確になります。

経営者自身のビジョンを明確に

自社に最適な出口戦略を見つけるためには、経営者自身が将来のビジョンを明確にすることが不可欠です。まず、ご自身の引退時期について、具体的な目標を設定することから始めましょう。単に年齢で区切るだけでなく、事業において「この目標を達成したら」といった区切りを設けることも有効です。引退後の人生をどのように過ごしたいか、どのような生活を送りたいかといった具体的なイメージを持つことで、出口戦略の方向性がより明確になります。

次に、会社を支えてきた従業員の将来についても、真剣に向き合う必要があります。従業員の雇用を継続したいのか、それとも新たなキャリアパスを支援したいのかなど、どのような未来を描くのかを具体的に考えましょう。従業員のキャリア形成や福利厚生に対する考え方も、出口戦略の選択に大きな影響を与えます。

各出口戦略のリスクとリターンを慎重に比較検討する

会社の将来を考える上で、それぞれの出口戦略に伴うリスクとリターンを深く理解し、比較検討することが不可欠です。M&Aは、創業者利益の獲得や事業継続、買い手企業とのシナジー効果などが期待できるリターンである一方、希望条件との不一致、情報漏洩のリスク、買い手企業との企業文化の統合といった課題が伴います。特に、契約に含まれない偶発債務や特殊な契約条件、人材の流出といった潜在的なリスクにも注意が必要です。

IPOは、多額の資金調達や信用力の向上といった大きなリターンが見込める一方で、厳しい上場基準への対応、多大な準備コストと時間、そして上場後の情報開示義務や経営の自由度への制約といったリスクを負うことになります。事業承継は、会社の理念や雇用の維持といった非金銭的なリターンが期待できる一方で、後継者育成の難しさ、資金調達、親族や従業員間の関係性といった課題に直面するリスクがあります。

専門家の活用

会社の出口戦略を検討し、実行に移すプロセスは、法務、税務、財務など、多岐にわたる専門知識を必要とします。これらの高度な知識をすべて経営者自身が網羅し、独力で対応することは極めて困難と言えるでしょう。そこで不可欠となるのが、信頼できる専門家のサポートです。M&Aアドバイザー、税理士、弁護士といった各専門家は、それぞれの得意分野で経営者を力強く支援します。

例えば、M&Aアドバイザーは、企業の客観的な価値を評価するバリュエーションを行い、譲渡候補先の選定、提案資料の作成、条件交渉などを代行してくれます。税理士は、複雑な税務手続きや最適な節税策について専門的なアドバイスを提供し、弁護士は、契約内容の精査、潜在的な法務リスクの洗い出し、各種法的手続きをサポートします。

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