「○○付き物件」で満室経営?|空室対策の成功・失敗事例

入居者ニーズの多様化で注目される「付加価値」競争

現在の賃貸市場は物件の供給過多が続いており、従来の集客ポイントだけでは入居者を見つけるのが困難な状況です。例えば2018年には、全国平均で21.4%もの空室率が報告されており、これは理想とされる5~10%を大きく上回る水準です。駅からの距離や築年数の新しさといった従来の強みだけでは、競合物件との差別化が難しい時代へと変化してきました。

近年、多様なライフスタイルの変化により、入居者が住まいに求めるものも細分化・高度化しています。このような背景から、特定のターゲット層の心に深く響く「付加価値」を物件に付与し、競合との差別化を図る「付加価値競争」が激化しています。単に設備を導入するだけでなく、入居者のライフスタイルに寄り添った付加価値の提供が、安定した満室経営を実現するための重要な鍵となるでしょう。

安易な導入は危険!失敗のリスクと成功のポイント

付加価値競争が激化する現代において、「とりあえず何か設備を導入すれば入居者が決まるだろう」という安易な考えでの設備投資は、無駄な投資となる大きなリスクを伴います。ターゲット層のニーズを考慮しない無計画な導入は、費用対効果の悪化を招く典型的な例です。例えば、安価でデザイン性の低い設備を導入した場合、物件全体のグレード感が低下し、かえって魅力が損なわれる可能性もあります。最悪の場合、赤字経営やローンの返済困難、物件の資産価値の大幅な下落につながりかねず、導入後の維持管理コストも無視できません。

成功の鍵は、徹底したエリアマーケティングとターゲット層のきめ細やかなニーズ分析にあります。地域の需要や競合物件の状況を十分に調査し、初期投資と維持コストを含めた費用対効果を冷静に見極めることが不可欠です。本記事では、具体的な成功事例と失敗事例を交えながら、無駄な投資を避け、満室経営へと導くための実践的なポイントを詳しく解説していきます。

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【成功事例6選】「〇〇付き物件」で満室経営へ

入居者ニーズが多様化する現代において、特定のターゲット層に深く響く「付加価値」を物件に付与することで、競合との差別化に成功し、安定した満室経営を実現した事例が数多く見られます。例えば、松井産業株式会社が手掛ける車やバイク愛好家向けのガレージハウス「K's Base」は、完成前から満室となるほどの人気を集めました。

本章では、このような「〇〇付き物件」の成功事例とそれぞれの成功ポイントを詳しく解説します。

【入居者が選べる内装】カスタマイズ可能物件で内見からの成約率アップ

特定の入居者に強く響く独自の付加価値として、「内装カスタマイズ可能物件」が注目を集めています。川崎市中原区を中心に、ジェクト株式会社が手掛ける「カスタマイズ賃貸」は、複数の壁紙や床材のサンプルを用意し、入居者が契約時に好みのデザインを選べるサービスです。これにより、「自分だけの空間を作りたい」と考える20代から30代の単身者やカップルのニーズを的確に捉え、大きな反響を呼びました。

この物件が成功した要因は、VR技術などを活用した内見時の「内装シミュレーション」にあります。入居希望者は、選んだ壁紙や床材を実際に適用した場合の部屋の雰囲気を具体的にイメージできるため、入居後の生活をよりリアルに想像しやすくなります。これが、内見からの成約率の大幅な向上につながりました。オーナー側も、事前に選択肢を用意することで、入居者による意図しない内装変更のリスクを回避できます。さらに、物件への愛着と満足度が高まることで、長期入居の促進にも成功しています。

【ペット愛好家向け】ドッグラン付き物件で競合と差別化

近年、ペットを飼育できる物件は増えていますが、単に「ペット可」というだけでは差別化が困難です。そこで注目されたのが、さらに踏み込んだ「ペットと快適に共生できる環境」の提供でした。ある物件では、敷地内の空きスペースを有効活用し、入居者専用のドッグランを設置しました。

ドッグランに加え、散歩帰りに便利なペット用の足洗い場、防臭効果に優れたペット専用のゴミ箱も完備しています。さらに、エントランスにはペット用シャワーも設置し、飼い主のきめ細やかなニーズに応えることで、物件の付加価値を高めました。これらの充実した設備は、ペット愛好家にとって希少価値の高い物件として認識され、ペット関連のコミュニティサイトやSNSで瞬く間に情報が拡散されました。その結果、遠方からの問い合わせも増加し、物件の集客力を大幅に向上させました。

この戦略の結果、周辺相場よりも高い家賃設定にもかかわらず、物件は即座に満室となりました。

【今話題】プライベートサウナで付加価値を創出

近年、「ととのう」という言葉がメディアで広く知られるようになり、空前のサウナブームが続いています。特に新型コロナウイルス感染症の流行以降は、スーパー銭湯やスパ施設における「おひとり様利用」が増加傾向にあり、サウナを健康習慣の一環として取り入れる人も少なくありません。このトレンドに着目し、健康やセルフケアへの意識が高い20〜30代の単身者をターゲットに、プライベートサウナを導入した物件が成功を収めました。

これは、都心部のワンルームマンションのベランダや室内空間に、家庭用1人用サウナを設置した事例です。具体的な導入費用と期間は以下のとおりです。

プライベートサウナ導入にかかる費用と期間想定

項目費用/期間
据え置き型1人用サウナ本体価格50万円〜200万円程度
電気工事・設置費用10万円〜30万円程度
設置期間1〜2日程度

入居者は「自宅でととのう」という他に類を見ない体験価値を得られるため、周辺相場より2万円高い家賃設定にもかかわらず、募集開始後間もなく満室となりました。この「サウナ付き物件」は、SNSでも高い拡散効果を発揮し、強力な広告塔としての役割を果たしました。その結果、他の競合物件にはない圧倒的な差別化を実現し、安定した高稼働率を維持しています。

【クリエイターを支援】防音室完備の楽器可物件

近年、音楽活動や動画配信を行うクリエイター、さらにはリモートワークで静かな環境を求める人々が増え、防音性能の高い住居への需要が高まっています。このような背景のもと、音楽大学やライブハウスが集中するエリアにおいて、音楽関係者や動画配信者を主要ターゲットとして、本格的な防音室を完備した賃貸物件が登場しました。従来の「楽器可」物件は増加していますが、居室そのものに高度な防音施工を施した物件は、依然として希少な存在です。

この物件は、隣室や外部への音漏れを気にすることなく、24時間いつでも創作活動に没頭できる環境を提供することで、競合物件との明確な差別化に成功しました。実際、施工中から入居申し込みが殺到し、物件完成時には満室になるほどの人気を博しました。周辺相場と比較して高い家賃設定にもかかわらず、募集開始直後から多数の問い合わせが寄せられています。入居者からは「理想の制作環境が手に入った」と高い満足度が示され、物件への愛着が長期入居にもつながっています。

【DIY派に響く】自由に改装OKで長期入居を促進

築年数が経過し、内装の古さが原因で空室が目立ち始めた物件で、大規模なリフォームに多額の費用を投じるのではなく、「入居者が自由に内装を改装できる」というコンセプトで、その弱点を逆手に取りました。

この戦略によって、入居者は自分の手で理想の空間を創り上げることができ、物件に対する愛着が深まりました。特に、水回りなど専門的な部分はオーナーが手入れしつつ、入居者の自由度を高める「ハーフDIY」のような形で、前の入居者がDIYした部分をそのまま引き継げる物件も存在します。これにより、費用を抑えつつ高い満足度を提供でき、その結果、退去率が大幅に低下し、長期入居の促進に成功しました。

【在宅ワーカーの支持獲得】高速インターネット・ワークスペース完備

コロナ禍以降、リモートワークが急速に普及し、都心に住む単身者の住まいへのニーズは大きく変化しました。特に、「安定した高速インターネット環境」は、入居者が重視する設備として上位にランクインするほど、現代の生活インフラとして欠かせないものとなっています。また、これまでの1Kや1LDKといった間取りでは、仕事とプライベート空間が重なり、集中しづらいという課題も顕在化しました。

こうした背景を受け、ある都心単身者向けマンションでは、在宅ワーカーを主要ターゲットに据え、物件全体に付加価値をもたらしました。具体的には、全戸に高速インターネット回線を無料で導入したほか、共用部には個別ブースや会議スペースを完備したワークスペースを設置。これにより、自宅での作業に集中できる環境を求める声に応えました。

結果として、この物件は周辺相場よりも高い家賃設定にもかかわらず、募集開始後すぐに満室となりました。在宅勤務が定着する現代において、働き方に寄り添った設備投資が成功を収めた好事例と言えるでしょう。

【失敗事例3選】なぜ?費用対効果が見合わなかった・・・

本章では、前章で紹介した成功事例とは対照的に、付加価値を導入しながらも、期待した空室改善効果が得られなかった失敗事例を取り上げます。これらの失敗の背景には、多くの場合、オーナーの思い込み、市場調査の不足、ターゲット層のニーズに対する誤解といった共通の原因が見られます。失敗から学び、リスクを最小限に抑えることが、安定した満室経営への近道となります。

【調査不足】駐車場を増設したのに空室が埋まらない…立地とのミスマッチ

あるオーナーは、所有物件が駅から離れていることから「車社会のエリア」であると判断し、空室対策として駐車場の増設を決定しました。1台あたりコンクリート舗装で約40万円から60万円、アスファルト舗装でも約30万円から50万円程度の費用がかかる投資でしたが、満室経営への期待を込めて工事を進めました。

しかし、実際の入居者層は、都心へのアクセスが良好な地域特性から公共交通機関を利用する車を持たない単身者やDINKS(Double Income, No Kids)世帯が主体でした。結果として、増設した駐車場はほとんど利用されず、肝心の空室も埋まらないという状況に陥ってしまいました。

物件周辺の交通事情や、実際にその地域で暮らす人々のライフスタイルを正確に把握するための市場調査を怠ると、費用対効果に見合わない無駄な投資に終わるリスクがあるのです。

【需要の誤解】単身者エリアにファミリー向け設備を導入した悲劇

学生や単身赴任者が多く住むワンルームマンション激戦区で、空室対策と差別化を図ろうとしたあるオーナーの事例をご紹介します。オーナーは入居率向上を目指し、高額な投資をして大規模なファミリー向けリフォームを断行しました。具体的には、既存の2部屋を繋げた広いリビングダイニングキッチン(LDK)への変更や、高価なシステムキッチン、追い焚き機能付きの広い浴槽などを導入したのです。

ターゲットとしたファミリー層からは「周辺に公園や学校がなく、子育てに適した環境ではない」と敬遠され、本来の入居者層である単身者からは「一人で住むには広すぎる上、家賃が高すぎる」と全く受け入れられませんでした。その結果、リフォームに投じた費用は回収できず、空室期間は長期化する事態となりました。

無計画な全面リフォームは、かえって入居者ニーズとのミスマッチを生み出し、費用対効果の低い投資となる典型的な例といえるでしょう。

【過剰投資】地方郊外でのハイスペック設備が宝の持ち腐れに

都心部の高級物件で人気が高いミストサウナやタンクレストイレといったハイスペックな設備を、地方郊外の単身者向けアパートに導入した事例があります。オーナーは付加価値を高め、高収益を目指しましたが、この高額な設備投資に見合うよう、家賃を地域の相場よりも高く設定してしまいました。

結果として、地域の入居希望者層からは「家賃が高すぎる」「自分のライフスタイルには過剰な設備だ」と敬遠され、残念ながら空室が全く埋まらない状況に陥ってしまいました。郊外エリアでは、駐車場や屋外物置といった実用的な設備が評価される傾向にあるため、都心向けのハイエンドな設備は、ニーズとの大きなミスマッチを生んだと言えるでしょう。

この失敗事例は、地域の家賃相場や住民が求める設備レベルを無視した「オーバースペック」な投資が、費用回収を困難にし、空室リスクを高める典型的なパターンを示しています。入居者ニーズの「見誤り」は、無駄な投資につながりかねません。

1Rマンション投資の注意点と成功の秘訣

失敗を避けるために!確認すべき3つのこと

魅力的な「〇〇付き物件」の成功事例と、安易な導入が招いた失敗事例を検証しました。これらの事例が示すように、入居者の心をつかむ付加価値は安定経営の強力な武器となり得る一方で、無計画な設備投資は高額な損失につながるリスクを伴います。無計画な投資は、賃料の下落や空室の長期化を招き、最悪の場合、破綻につながりかねません。衝動的な投資ではなく、事前の冷静な分析と周到な計画こそが、費用対効果の高い付加価値を見極め、失敗を回避するための不可欠な要素です。本章で解説する3つのチェックポイントは、具体的な指針となるでしょう。

地域の特性とターゲット層のニーズは合致しているか?

付加価値のある物件導入の成功は、その地域の特性とターゲット層のニーズをどれだけ正確に把握できているかにかかっています。例えば、地域の人口構成や年齢層などの自治体統計データを確認するだけでなく、周辺の大学、主要企業、商業施設といった施設についても詳細に調査することが重要です。さらに、近隣の不動産会社へのヒアリングは、その地域に特有の入居者ニーズや競合物件の動向を知る上で非常に有効な手段となるでしょう。

調査対象具体的な内容得られる情報
自治体統計データ地域の人口構成、年齢層地域全体の基本的な居住者層
周辺施設大学、主要企業、商業施設居住者の属性(学生、社会人など)、生活利便性
近隣の不動産会社ヒアリング地域に特有の入居者ニーズ、競合物件の賃料や設備、空室率

こうした情報に基づき、「単身者向けエリア」「ファミリー層向けエリア」といった大まかな分類に留まらず、さらに踏み込んだ入居者像(ペルソナ)を設定することが成功の鍵です。

初期投資と維持コストは想定家賃に見合っているか?

付加価値設備を導入する際は、初期費用だけでなく、導入後の維持・管理にかかるコストも含めて、正確に算出する必要があります。例えば、据え置き型の1人用サウナの場合、本体価格が50万円から200万円程度、電気工事や設置費用が10万円から30万円程度かかるように、設備によって初期投資額は大きく変動します。

  • 清掃費
  • 電気代
  • 定期的なメンテナンス費用
  • 将来的な修繕費用

これらの総コストを算出した上で、導入する設備が周辺相場と比較して家賃にどれだけ上乗せできるかを、現実的にシミュレーションすることが重要です。投資した費用を何年で回収できるのか、また空室期間の短縮効果がどの程度見込めるのかなど、長期的な視点での収支計画を立てる必要があります。費用対効果を厳密に検証し、採算が取れるかを冷静に判断してください。

ニッチ戦略が最善策?他の空室対策と比較検討する

ニッチな付加価値戦略は大きな投資を伴うため、空室対策の唯一の解決策ではありません。実施を検討する前に、他の空室対策と比較検討することが極めて重要です。より低コストかつ低リスクで実施可能な対策も存在するため、費用対効果・即効性・ターゲットの広さを複合的に検討することで、物件に最適な戦略を見出すことができます。

まとめ:ニッチ戦略は万能薬ではない。地域と入居者に寄り添う空室対策を

本記事では、特定の入居者層に深く響く「〇〇付き物件」の成功事例と、安易な導入が招いた失敗事例を具体的にご紹介しました。ガレージハウスやプライベートサウナ付き物件のように、ターゲット層のニーズを的確に捉えたニッチ戦略は、周辺相場よりも高い家賃設定でも安定した満室経営を実現する強力な武器となります。一方で、単身者エリアにファミリー向け設備を導入した事例や、立地とのミスマッチで駐車場を増設した事例が示すように、市場調査やニーズ分析を怠れば、投資に見合わない結果を招き、大きな損失に繋がりかねません。

成功の鍵は、奇抜なアイデアや豪華な設備を導入することではなく、物件単体の魅力だけでなく、「今後も安定した収益を生み続けられるか」という時間軸を意識した判断にあります。物件がある地域の特性とターゲット層のニーズを徹底的に分析し、それに合致した付加価値を戦略的に提供することこそが、これからの賃貸経営の成否を分けるでしょう。

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